2024
2021.12
2021年も残すところ数日となりました。
今年も雑誌やWEBを通してさまざまな論考が発表されました。それらは、毎月の掲載作品や特集に紐づいて執筆された内容ですが、1年という時間軸のなかで読み返してみると、異なる視点が得られるかもしれません。新建築.ONLINEでは、2021年の締めくくりとして『新建築』に今年掲載された建築論壇を3本公開します。ぜひお楽しみください。
2021.11
昨今の新型コロナウイルスの感染者数減少に伴い、美術館やギャラリーが再開し始め、少しずつまた美術館に足を運べるようになり、芸術に触れられる場がある喜びを実感している人も多いのではないでしょうか。
1930年ごろから始まった日本の美術館建築の歴史の中で、今多くの美術館が更新の時期を迎えています。今回、インタビューを行った3者の館長・学芸員が務める美術館は、2020〜21年に建て替えやリノベーションを行い、3者はさまざまなかたちでそこに立ち会っています。
美術館は元来、貴重な美術品や優美な文化を嗜むための非日常的な場所でした。しかし、3者へのインタビューを通して浮かび上がってきたのは、「リビングルームのような場所」「『活動』にフォーカスを当てた美術館」「オープンしてからきちんと使えるようなかたち」など、美術館を訪れる・運営する人びとの日常的な行為に紐づく体験への思考です。そこには、美術品を展示する場所から、体験によって豊かさを享受する場所への転換が見て取れます。かたちや展示品が活動を決めるのではなく、活動がかたちづくっていく。多くの時間を現場で過ごす彼らが語る現代の美術館の姿を聴いていただけたらと思います。
2021.10
情報技術時代であり、コロナ禍の今、建築を語ることとは何を語ることなのか。これを今月のテーマに掲げました。建築の実践者でありながら書くことを大事にしている連勇太朗さんと、建築を写真というメディアで俯瞰的に捉え続けている大山顕さん。2者へのインタビューでは、人との対話や、SNSやスマートフォンという情報技術の発展による建築体験の変化など、自身を取り巻く環境から理論や思考方法を導き出していることが語られています。
また、青木淳さんが審査員を務めた新建築論考コンペティションの受賞論考9本。これらは「コロナの時代の私たちと建築」というテーマのもと、コロナ禍での自身の暮らしにおける苦悩や都市の変化に気づきを得て、その先に何か新しい建築のあり方を見出そうとしています。
情報技術時代に、建築を語るための軸をどこに見出し、何を思考するのか。そしてその時、言葉とは、メディアとはどのような存在なのか。11の文章や表現から見ていただけたらと思います。
2021.09
この特集は「情景」という言葉をテーマに掲げ、個人の体験から見えてくる建築とはどんなものかを探ろうとしたものです。今回書いていただいた3人の建築家は共通して、自らの体験と本や講義で得た思想が重なることで深く情景として記憶に刻まれ、そこから建築的な何かを見出しています。どれも、知らない情景をイメージするところから始まり、現在までの変遷の追体験するような文章でありながら、体験できないゆえに理解しきれないもどかしさがあります。この特集を通して、根拠や事実に寄らない個人的なものの蓄積から見出された建築観を想像し、読者のみなさんも自身の記憶に残る情景にそれを探していただけたらと思います。
2021.08
コロナ禍で2度目の夏を迎えました。東京オリンピックは、会場付近の封鎖、無観客という隔離状態での開催となりました。人が集う、そのための場所がある、というこれまでの当たり前を見直さざるを得ない局面にあります。今、世界中が大規模でハイテクな都市を目指して競い合っています。東京も都市開発によって急速に変化し続け、足元に広がる公共空間での人間的なスケールの取り組みは、都市をよりよくするための一仕掛けとして認識されてきたように思います。しかし、改めて社会状況と都市の姿を照らし合わせてみると、その小さな仕掛けが、今の生活において切実に必要とされる課題だといえるのではないでしょうか。
そんな問いから、今月は「生活から立ち上がる公共空間のかたち」をテーマに掲げました。飲食店の営業形態の崩壊や、路上や広場などの利用規制、ジェンダーやバリアフリーなど多様性の尊重。3本の記事に共通して感じたのは、都市を生活に近くて小さいところから解像度高く捉え続けることに、さまざまな社会の課題に応える時の糸口があるのではないかということです。個人が都市を意識することで立ち上がる公共空間の新しいあり方を探ります。
2021.07
2021年7月、「新建築オンライン」は動画や記事を主体とするオンラインメディアとしてリニューアルいたしました。オンラインオリジナル記事や建築動画によって毎月さまざまな建築情報を発信していきます。
昨年から続くコロナ禍でリモートワークが余儀なくされたことにより、さまざまな情報技術が急速に普及しています。これまで人との出会いの中で得た情報もネットを介して得ることが増え、より一層、情報と切り離しては生活できない社会になりました。今月は、そんな現代社会の大きなテーマである「情報技術」について、2021年6月に開幕した第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示を通して考えます。開催が1年延期され、さらに渡航が困難なため遠隔での設営となった同展は、3Dスキャニングやモデリングなどのさまざまな情報技術を駆使して実現しました。この苦境にどう挑み、そこから何を見出したのか。参加作家3名へのインタビューと、キュレーターを務めた門脇耕三氏と2名のゲストによる鼎談を通して紐解きます。普段無意識に受け入れている情報を、意識するか/しないか、取捨選択するか/しないか、立ち止まって考えることで、建築にとっての情報とは何か、改めて考えるきっかけになればと思います。