大須賀嵩幸
1994年生まれ/2012年〜京都大学/2016年〜京都大学平田晃久研究室で「新建築社 北大路ハウス」の設計に参加/2018年〜京都大学平田研究室博士後期課程/「新建築社 北大路ハウス」に2018年〜入居、2020年〜管理人/2021年〜砂木
こんにちは、小豆島ハウスの現場で暮らしている大須賀です。
3月から始まった小豆島ハウスの建築工事も概ね終わり、現在は瀬戸内国際芸術祭2022に向けた準備を進めています。会期中は、建築家やアーティストによる作品・プロジェクトが展開されます。今回は、今の現場の様子と開催概要をお届けしますfig.1。
母家は、展示の拠点でもあり、それ自体が建築作品でもあります。玄関から入ると、新旧さまざまな意匠に囲まれた、背の高い吹抜け空間が現れます。既存の床や壁を撤去したことで、2階洋室の天蓋など、元の部屋のオブジェクトたちがそのまま吹抜けに浮かんでいますfig.2。吹抜けに光を採り入れるポリカーボネートの壁と、構造を担保する耐力壁のパッチワークが壁面を構成し、仕上げの隙間には既存壁紙の花柄模様をスキャンしたプリント合板が張られています。耐力壁の合板の上には、取り外し可能なガルバリウム鋼板のパネルと、不整形に切り出された黒塗りベニヤ板が取り付き、両側で対照的な意匠となっていますfig.3fig.4。特徴的な個性を持ったそれぞれの意匠は、デザインの過程で互いに参照されることで少しずつ影響し合い、自由な雰囲気と緩やかな繋がりを感じさせる空間になっています。
工事がひと段落する間もなく、芸術祭に向けた展示設営が始まりました。1階の和室では、砂木の砂山太一さんと木内俊克さんが現地入りし、インスタント事務所を展開してハンドアウト作成などの作業をしていますfig.5。
母家に隣接し、ブラックキューブの一室空間に改修された離れでは、建築家のアンドリュー・コバックによる模型作品「CHICAGO MODEL Proposal for Collective Living II (Homage to Sir John Soane)」が搬入され、その横では旧谷邸を題材にした映像展示のスタディが行われていますfig.6fig.7。
その隣の蔵には、解体工事の廃材が資材として収められ、さらに、小豆島ハウスから着想を得たというアーティストの東城信之介さんによる作品が設置されていますfig.8。
小豆島ハウスのアプローチから繋がる、住宅を1軒挟んで南側の空き地には、FOOD & the CITY研究会によるフードトラックがオープン予定です。詳細は中村航さんによる連載「小豆島にフードトラックをつくる」へ。
建物の工事が終わったというのに、モノもヒトもコトも、すべてが慌ただしく動き続けている毎日で、ひと段落という気がまったくしていません。オープンを前に様子を見にきた新建築社の社長が「ようやく、プロジェクトの1合目だね。」と言っていたけれど、本当にその通りだと実感しています。竣工は建物にとってひとつの大きな節目だけど、これまでが序章に思えるくらい、ずっとこれからも動き続けている小豆島ハウスでありたいと思いました。
夏会期は8月5日〜9月4日、10〜17時のオープンです。もし僕を見かけたら、ご案内するのでぜひ声をかけてください。(※8月9日、23日、30日は休館日)