大須賀嵩幸
1994年生まれ/2012年〜京都大学/2016年〜京都大学平田晃久研究室で「新建築社 北大路ハウス」の設計に参加/2018年〜京都大学平田研究室博士後期課程/「新建築社 北大路ハウス」に2018年〜入居、2020年〜管理人/2021年〜砂木
こんにちは、小豆島ハウスの現場で暮らしている大須賀です。
瀬戸内国際芸術祭の夏会期開始(8月5日〜)に向けて、小豆島ハウスの工事も大詰めを迎えています。
実は僕自身、実務の設計や現場監理を担当するのは今回で3件目です。リノベーションの現場は過去に「新建築社 北大路ハウス」(『新建築』1802)で経験しましたが、今回はじめてのこともたくさんあります。そのひとつが、鉄骨の設計です。
今回は特に印象に残っている鉄工所とのやり取りを振り返ってみます。
小豆島ハウスの母屋の改修には3つの鉄骨の要素があります。新しく付け替える屋内階段、2階から蔵のテラスを繋ぐブリッジ、そして新設する玄関前にかかる庇ですfig.1fig.2。
鉄工所との初回打ち合わせでは、「直島パヴィリオン」(藤本壮介建築設計事務所、『新建築』1507)を担当したという鉄工所の所長に、いきなり大目玉をくらいました。原因は、ブリッジの図面に記された「手摺子:フラットバー t=3mm」という指示でした。試しに持ってきてもらった3mmのフラットバーは、まるで竹がしなるように、簡単にたわみました。実際に触れば、3mmのフラットバーは人がもたれる箇所に使うものではないとすぐにわかります。所長に「そんなことも分からんなんて、この現場、やめようかと思った(笑)。」とボヤかれ、気が引き締まりましたfig.3。
もうひとつ難しかったのは、溶接です。溶接という言葉自体、試験勉強でしか見たことのない僕は、たとえば3mmのフラットバーを溶接したらどれくらいひずむのかということを、全然分かっていませんでした。百聞は一見に如かずということで、高松の鉄工所を見学させてもらうことに。目の前で溶接を見せていただき、なんと体験までさせてもらいました。自分がつくった溶接の痕は、図面上の記号よりもずっといびつで、不恰好でしたfig.4fig.5fig.6。
そうこうしながらなんとか施工図をまとめ、現場への搬入日を迎えました。全長5m弱の鉄骨階段やブリッジを、狭い道に面し、階段の上にある小豆島ハウスへ搬入するのは一大事でした。かにクレーンやチェーンブロックを使い、数十人で搬入を行う様にはお祭りのような力強さがあり、棟上げ式のような高揚感を覚えましたfig.7fig.8fig.9。
実際にモノに触れたり、溶接を体験したり、搬入に立ち会ったりしたことで、制作や施工でどこが難しいのか、どう図面を書いたら施工者に伝わるのかが、以前より想像できるようになりました。現場で工事が見れる日も残りわずかですが、少しでも多くのことを学んでいければと思います。