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2022.06.20
Essay

空き家を生き返らせる

建築学生11年目が小豆島の現場で暮らしてみた #3

大須賀嵩幸(砂木/京都大学平田研究室博士後期課程)

こんにちは、小豆島ハウスの現場で暮らしている大須賀です。
小豆地域(小豆島、小豊島、豊島)には3,000軒もの空き家があるといいますが、この小豆島ハウスプロジェクトも、とある1軒の空き家をリノベーションし、そこで起こるさまざまなできごとを発信していくプロジェクトです。今回は、この家にかつて住んでいた谷さんからいただいた写真や伺った話を通して、このプロジェクトの舞台となる「旧谷邸」についてご紹介したいと思います。

旧谷邸は、坂手港から歩いて5分ほど、メインの道路から細い坂道を上がったところにあります。坂手地域はたくさんの細い道が通っていることが特徴的で、車も通れないような細い道もたくさんあります。旧谷邸への道は、比較的広いとはいえ、2tトラックがギリギリ通れる程度です。その坂道のさらに先にある階段を上がったところに、旧谷邸の3つの建物が建っていますfig.1。2階建ての母屋、平屋の離れ、そして蔵です。

狭い道かつ階段の先という、建物を建てるに当たっては厳しいアクセスですが、母屋の2階から坂手の海を眺めると、この場所に自邸を建てた谷さんの思いに気づかされますfig.2。谷さんは海運で財を成した名士として知られていて、だからこそ絶好のロケーションで海を望むこの高台に家を建てたのでしょう。

谷さんの自邸への並々ならぬ思い入れは、各部の意匠へのこだわりとしても現れています。
船や舵輪の装飾、エンボス加工がされた独特の壁紙、誂えられた照明器具など、いわゆる古民家とは違った昭和の雰囲気を色濃く映した空気感が旧谷邸には満ちていましたfig.3。その中でひときわ目を引いたのが、2階のふた部屋の洋室にあった2つのオブジェクトです。水色の部屋の壁面にあしらわれたギザギザの装飾と、ピンク色の部屋の上から吊られた天蓋fig.4fig.5。こうした特徴的な要素を残すところから、設計の手がかりを掴んでいきました。
この家で暮らしていた谷さん姉妹から聞いた話では、姉の富美子さんがピンク色の部屋、妹さんが水色の部屋を使っていたそう。でも富美子さん曰く、「こんな天蓋の下で寝るのは恥ずかしくて、ベッドをずらして使っていた」ようです。

後日、富美子さんから「この家がどのように生き返るのか、皆で楽しみにしています。」とお手紙をいただきました。かつて谷さんたちが生きてきた家としての「旧谷邸」の記憶や空気感の上に、「小豆島ハウス」としての出来事が積み重なるかたちで家が生き返ったらいいなと思いますfig.6fig.7

大須賀嵩幸

1994年生まれ/2012年〜京都大学/2016年〜京都大学平田晃久研究室で「新建築社 北大路ハウス」の設計に参加/2018年〜京都大学平田研究室博士後期課程/「新建築社 北大路ハウス」に2018年〜入居、2020年〜管理人/2021年〜砂木

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    平成2年5月に撮影された旧谷邸の俯瞰写真。写真中央が2階建ての母屋、その右手の平屋が離れ、母屋後ろに見えるブルーの壁面の建物が蔵。/提供:谷富美子

    母屋2階から見える景色。/提供:大須賀嵩幸

    母屋1階のリビングとして使われていた場所。天井には舵輪の装飾からシャンデリアが吊されている。/提供:砂木

    母屋2階洋室1。壁にはギザギザ模様の装飾が施されている。/提供:砂木

    母屋2階洋室2。天井に吊られた天蓋が特徴的。/提供:大須賀嵩幸

    2階洋室付近の解体中の様子。手前にギザギザの装飾、奥に天蓋を残している。/提供:大須賀嵩幸

    1階から解体中の2階を見上げる。ギザギザの壁の裏側にはトイレの壁やタイルなどが残っている。/提供:大須賀嵩幸

    fig. 7

    fig. 1 (拡大)

    fig. 2