このプロジェクトは、自分たちで設計から施工、運営まですべてやってみるというのが隠れたコンセプトであった。材料も現地で手に入る汎用性のあるものに限り、コストも抑えながらセルフビルドでつくる。軽トラック上のキッチンユニットも、アウトドアダイニングも、ホームセンターとモノタロウ頼みだ。
準備段階でも、現地視察や打合せで島を訪れるたびにホームセンターの品揃えを確認していた。小豆島は離島ではあるものの、島の規模は大きく(人口はおよそ26,000人で離島としては日本最大級)、島内にも十分な品揃えのホームセンターがある。足りない分はフェリーで1時間ほどの高松へ行けば、さらに巨大なホームセンターがいくつもあるので、材料調達はなんとかなりそうだったfig.1。トラックで直接乗り付けられる巨大な資材売り場は特にテンションが上がる。そこで手に入る材料をもとに設計を進めていたが、詳細までは詰めきれないため、どうしても「ホームセンターで考える」という時間が生じるfig.2。この材を留めるのにはこの金物を使い、こちらは別の金物、もっと小さいものはないか、もっと強いものはないかなどあれこれ議論をしながら床に図面を並べ、使用個数をカウントしたりしながらホームセンターで設計をする。
木材は図面の寸法通りに加工してもらい、現場では組み立てのみとすることを想定していたが、現場での作業性などを考慮して、急遽電動丸鋸も購入した。それによって、現地で「つくりながら考える」ということも可能となったfig.3。そもそも建築の設計においては、建築家が設計をしたものを図面化し、それを他者(施工者)に渡して制作してもらうという、いわばプロセスの断絶が必然的に起きる。セルフビルドはその断絶を生まないのが最大の利点でもあって、そのためには現場での部材加工が必須なのはいうまでもなかった。
制作部隊の学生チームは、大学院生ともなると現場作業なども慣れたもので、分担してどんどん仕事を進めていく。部材を加工し、塗装、乾燥、組み立てをテキパキこなしながら、並行してディテールのスタディやモックアップの強度確認など行う。
また、当たり前のことではあるが、平らでないアスファルトの地面上で土台を組もうとするとさっそく歪み出す、といった類の小さな問題が続出する。作業床をつくるために、当時品不足で非常に高値をつけていた構造用合板を買い足した。余った木材を切って「土台の土台」をつくったり、治具や定規をつくったり、もちろん周囲への養生や掃除など周辺整備は重要だ。
小さな問題といえば、必要な材料が届かなくて困ったのも離島ならではかもしれない。そもそも購入時に、離島配送不可という店舗も多く、送料も増額、納期もかかる。さらに予定配送日から遅れることもあったため、苦労した部分もある。
主要材料である干網が、大量にサイズ違いで届くという問題が生じた。発注担当だった学生のコデショ君は青ざめた(彼は間違っていなかった)が、研究会メンバーの宮原真美子さんの迅速な対応で、正しいサイズの荷物が夕方の船便で急遽届いたりもした。僕はとっさに間違ったサイズで成立するための構造変更を考えるなど、妥協ありきで物事を処理する癖がついてしまっているのだが(無茶振りを処理する経験が長いのか…)、ここもチームワークに助けられた。
昨今の資材不足・高騰による問題も影響した。まず、一般的な構造用合板がどこにもない。9mmのOSB合板だけは在庫があったため、それで図面を作成していたのだが、いざ島に入ると構造用合板が入荷されていた。その時点で悩んだが、結局12mmの構造用合板に変更。たかが3mm、されど3mm、強度は上がったが3mm分の図面修正が余儀なくされるfig.4。
そんなこんなで制作を進め、真夏の炎天下に作業をするのは身体的に相当ハードだったし(消費したペットボトルの量は尋常ではなかった)、他にもさまざまなトラブルが発生したが、皆で力を合わせてひとつのものをつくり上げる体験は本当に楽しいものだったfig.5。
制作場所は小豆島ハウスそばのバス駐車場を借りることができたfig.6。電源があって、雨と日差しを防げるのはこの上なくありがたい。現地の方々にもさまざまなかたちでサポートしていただいた。ものをつくるという行為には、制作場所や道具、物流、現地での協力・助言など、その背後のさまざまなバックアップが欠かせないということを改めて実感した。