台湾の都市と建築探訪
私は若い頃から、まちを探索することが生活の一部だった。
都市計画の博士号を取得するために米国に滞在していた数年間は、ヨーロッパとアメリカのまちを巡り、市場の声と匂い、教会前の広場、旧市街の散策、または祭りへの参加を通して、Lewis Mumford(ルイス・マンフォード)が言った「都市は文化の容器である」を体感した。
台湾では21世紀以来、革新的な建物がまち中に、雨後の筍のように建てられた。たとえば、李祖原建築士が設計した世界一の超高層建築物であった台北101や 、Vincent Callebaut(ビンセント・カレボー)が設計し、建物全体に約23,000本の木が植栽された陶朱隱園などがある。そして同時に、依然として旧市街地は活気にあふれており、政府と民間の連携で多元的な都市再生実験が行われている。
本コラムでは、都市の新・旧共生、緑園都市、生活景観、芸術特区の4つの観点から、台湾特有の文化・歴史背景を守りながらコミュニティや地域社会の力を活用する各都市のさまざまな試みを解析し、オーガニックシティ(Organic City)の魅力を存分に紹介する。
都市の新・旧共生
第1回は台北を紹介する。台北は台湾の政治、経済、文化の中心で、異なる時代に建てられたさまざまな建築物から多元的な社会と文化の含みを感じられる。これら新・旧の建物は、遺すべき外観と空間機能を融合することが試みられ、都市の活気をつくり出している。fig.1
台北市西區門戶計畫(西区門戸計画)
台北市西區門戸計画は台北の玄関であり、台北駅および台北府城北門周辺の歴史的建造物集落を中心に、「引き算のデザイン」の発想から橋を解体し、史跡の「北門」(台北府城北門)を再現する再開発プロジェクトである。大型緑地が台北駅、北門、淡水河および大稻埕歴史街区を連結し、都市の歴史的景観を守りつつ、都市の更新を実現した。fig.2fig.3
この計画は、都市の新しい脈絡を体現するだけでなく、都市更新の機会もつくりだす。そのなかで、SOM(Skidmore, Owings & Merrill)が設計した「台北双子星」(TAIPEI TWIN TOWERS) 開発プロジェクトでは、ホテル、オフィス、ショッピングモール、アート・スペースが備わった緑豊かな高層建築が計画されている。ビルの外観には台北盆地の独特な景観や文化・歴史的要素を具現化し、都市の発展において新旧融合のモデルとしての期待が集まる。fig.4
大稻埕歴史風貌特定專用區(大稲埕風貌特定専用区)
大稻埕(だいとうてい)は清末から日本統治時代にかけて台湾の経済、社会、文化の中心地として台北の商業貿易の中心的な地位を確立した。政府と地元の力でおよそ300棟の町屋や空家が次第に修復保存され、地元の人びとのアイデンティティが守られたうえで、文化創造産業と伝統産業を融合した歴史的問屋街として新しい風貌を創出している。
翻訳/林君嶸(奈良女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程社会生活環境学専攻)