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2020.12.01
Essay

第1回:イントロダクション

物と身体のふるまいからデザインを考える

三好賢聖/日本学術振興会特別研究員PD(慶應義塾大学訪問研究員)

新型コロナウイルスの感染拡大以来、人や物を触ることにたいして、私たちの体は絶えず黄色信号を灯している。たとえばドアノブに触れるという一瞬の行為にさえリスクが潜む今、以前のようにぎゅっとドアノブを握ることは躊躇われ、まるで汚いものを触るかのように手をかける。

フィンランドの建築家で現象学者のユハニ・パラスマ(Juhani Pallasmaa)の言葉を借りれば、ドアノブとは建築との握手であった。*握った手の大きさや温もりから相手の人生を感じるように、ドアノブの握り心地によって、私たちは建物の歴史を訪問し、そこに住み通った無数の世代と握手を交わす。fig.1

ドアノブを握手にたとえるなら、自動ドアはドアマンがそっと戸を引くジェスチャーか、もしくはソーシャル・ディスタンスをきちんととった距離で行うお辞儀といえるだろうか。自動ドアは、ドアノブのように直接触れるものでないにもかかわらず、私たちはその動きを見ただけで、ふるまいの機微─軽やかさや重々しさ、滑らかさやぎこちなさ─を感じとることができる。コロナとの長期戦を受け入れざるを得ない今、こうした「触れない、けれど感じる」という世界に、デザインの新しい可能性がある。

本コラムでは、筆者のこれまでの制作と研究をもとに、デザイン・リサーチ、キネティック・アート、ダンスなどの事例をとりあげる。物と身体それぞれのふるまいに着目することで、デザインをとりまくさまざまな思考と方法論について考えていきたい。

*ユハニ・パラスマ 『The Eyes of the Skin: Architecture and the Senses』 (Academy、1995年/John Wiley & Sons、2005年)

三好賢聖

兵庫県生まれ/デザイナー、研究者/日本学術振興会特別研究員PD(慶應義塾大学訪問研究員)/東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻修士課程を修了後2015年渡英/2019年Royal College of ArtにてPhD修了/Studio POETIC CURIOSITY共同主宰/著書に『Designing Objects in Motion: Exploring Kinaesthetic Empathy』(2020年、スイスBirkhäuser)

三好賢聖
物と身体のふるまいからデザインを考える
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Juhani Pallasmaa Interview: Art and Architecture/Louisiana Museum of Modern Artより転載

fig. 1

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