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2022.04.08
Exhibition

分野拡張的な試みから示される未来

KUMA EXHIBITION 2022

本展は、コロプラ創業者の馬場功淳氏らが2016年に創立したクマ財団のクリエイター奨学金を受けた学生たちの成果展だ。2パート編成で計71人が参加した。
4月1日〜10日に、ANB Tokyoを会場に開催されている第2期は30人が出展。上階から下階に下りながら見る構成で、立体や彫刻などさまざまな作品が展示されるfig.1fig.2。建築や美術などの分野を超えた可能性を模索する作品が多く見られた。

たとえば、成定由香沙(東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻)の「The Room is Still There.」(2022年)fig.3は、映像によって建築が内包する時間を探求する。布幕に湯浅良介設計の住宅「となりはランデヴー」(『新建築住宅特集』2204)の定点映像が投射され、時折住民が横切ったり、カメラにぶつかったりすることではじめてそれが映像であることが分かる。建築は竣工後は変化なく存在しているように見えながら、実際は長い時間の中で小さくも変化しているということを表現している。
「Gyroid Dress」(2022年)fig.4は、櫻井悠樹(早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻)が建築的観点から制作したドレスだ。建築と衣服は内と外、表と裏という2面をもつ点で共通していることを前提としながら、その既知の性質を覆すことを試みている。布の両面が見えるひだ状のユニットによって多孔質の面を形成し、3DCADを用いて3次元曲面で全体を構築。空間を強く分節しない、連続的な形態をつくり上げている。
花形槙(多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻)の「still human」(2021年〜)fig.5は、映像を用いて人間の身体の拡張を試みる。足や胴にカメラを着け、そのカメラに映る映像をヘッドマウントディスプレイで見ながら行動する人の様子を放映している。カメラを用いて目の位置を移動させることによって身体にとっての前後左右・上下が変わり、それに伴いひとつひとつの動作も変化する様子が見られる。

独自の課題意識から生まれた領域横断的な作品によって、未来への多彩な可能性が示される展示であった。

*()内肩書きは2021年度時点。

(新建築.ONLINE編集部)

KUMA EXHIBITION 2022

  • 会場

    ANB Tokyo(東京都港区六本木5-2-4 2〜7階)

  • 会期

    Part.02:2022年4月1日(金)~4月10日(日)

  • 会場構成

    会場構成:草薙岳仁、住田百合耶

  • 公式サイト

    https://kuma-foundation.org/exhibition2022/

デザイン
展覧会
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6階会場風景。左の一角には谷村メイチンロマーナ「ROMANA TOY STORE」(2021年)、右のブースには西村梨緒葉「歌を教える」(2022年)、さらに奥の壁面には久坂蓮「All call to you」(2022年)が展示される。/撮影:新建築.ONLINE編集部

6階会場風景。左手前に写る像は八木華「fragments」(2022年)、中のパネルと模型は岡野元哉「出雲に海苔あり塩あり」(2020年)、右の壁面は木原幸志郎「Blue Body」(2021年)。/撮影:新建築.ONLINE編集部

成定由香沙「The Room is Still There.」(2022年)。湯浅良介設計の住宅「となりはランデヴー」(『新建築住宅特集』2204)の内部を定点で撮影したシーンを映している。/撮影:新建築.ONLINE編集部

櫻井悠樹「Gyroid Dress」(2022年)。ひだ状のユニットを連続させ、表裏、内外が判然としないドレスをつくり上げている。/撮影:新建築.ONLINE編集部

fig.5 花形槙「still human」(2021年〜)。カメラを用いて目の位置を移動させて行動するパフォーマンス映像を映す。/撮影:新建築.ONLINE編集部

fig. 5

fig. 1 (拡大)

fig. 2