本展は、コロプラ創業者の馬場功淳氏らが2016年に創立したクマ財団のクリエイター奨学金を受けた学生たちの成果展だ。2パート編成で計71人が参加した。
4月1日〜10日に、ANB Tokyoを会場に開催されている第2期は30人が出展。上階から下階に下りながら見る構成で、立体や彫刻などさまざまな作品が展示されるfig.1fig.2。建築や美術などの分野を超えた可能性を模索する作品が多く見られた。
たとえば、成定由香沙(東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻)の「The Room is Still There.」(2022年)fig.3は、映像によって建築が内包する時間を探求する。布幕に湯浅良介設計の住宅「となりはランデヴー」(『新建築住宅特集』2204)の定点映像が投射され、時折住民が横切ったり、カメラにぶつかったりすることではじめてそれが映像であることが分かる。建築は竣工後は変化なく存在しているように見えながら、実際は長い時間の中で小さくも変化しているということを表現している。
「Gyroid Dress」(2022年)fig.4は、櫻井悠樹(早稲田大学大学院創造理工学研究科建築学専攻)が建築的観点から制作したドレスだ。建築と衣服は内と外、表と裏という2面をもつ点で共通していることを前提としながら、その既知の性質を覆すことを試みている。布の両面が見えるひだ状のユニットによって多孔質の面を形成し、3DCADを用いて3次元曲面で全体を構築。空間を強く分節しない、連続的な形態をつくり上げている。
花形槙(多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻)の「still human」(2021年〜)fig.5は、映像を用いて人間の身体の拡張を試みる。足や胴にカメラを着け、そのカメラに映る映像をヘッドマウントディスプレイで見ながら行動する人の様子を放映している。カメラを用いて目の位置を移動させることによって身体にとっての前後左右・上下が変わり、それに伴いひとつひとつの動作も変化する様子が見られる。
独自の課題意識から生まれた領域横断的な作品によって、未来への多彩な可能性が示される展示であった。
*()内肩書きは2021年度時点。
(新建築.ONLINE編集部)