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2021.07.01
Report

コロナ禍でのリモートゼミの楽しみ方

西田司(建築家)

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言の発令により、大学が休校し、リモートでの授業を余儀なくされました。このコロナ禍をきっかけに東京理科大学西田司研究室はYouTubeの配信を使ったラジオ形式の講義「コロナの時期の過ごし方を面白がる建築学生ラジオ」を始めています。ラジオを始めた経緯をお聞きすると共に、ゼミの一環で開催された新建築データとの共同企画「新建築データを面白がるゼミ」を紹介していただきました。

ゲストを招いたラジオ形式のゼミ

「コロナの時期の過ごし方を面白がる建築学生ラジオ」と銘打ったラジオをyoutubeで始めたのは1度目の緊急事態宣言下の2020年4月13日だった(2020年4月7日に7都府県に緊急事態宣言発令)。
宣言が出て以来、ステイホームをしている研究室の学生たちと毎朝9時過ぎに15分ほど、学生同士のコミュニケーションをとる軽いゼミを行なっていた。その中でコロナ禍で大学や街に行けないとインプットが不足しているという不安の声があった。今まで通りのことをオンラインに移行してやろうとすればするほど、上手くできないことのストレスが増えていく。そこで、コロナ禍で生まれたステイホームやリモートの価値を最大化することに意識を切り替えると、できることやアイデアが増えていくのではないかと考えた。例えば、オンラインであれば移動時間を確保する必要がなくなるので、建築家をはじめとするゲストを招き、少しの余白時間でゼミに参加してもらうことができる。画面を通して直接話す機会をつくれるため、学生とゲストの距離を縮められると感じた。またラジオ形式にするとアドリブでの会話が増えるため、話題の多くはゲスト自身がその時考えていることになり、建築家の生の思考や、おぼろげなアイデアに触れられる。生の声を聞くことで、よりゲストに興味をもったり、学生自身もその話を元に思考を巡らせ始め、個人の研究のベースにある好奇心や向上心の源になりやすいと感じた。実際に学生からはこのような声があがっている。

印象的だったのは昨年10月に行われた建築家の伊藤暁さんによる講義で、新型コロナウイルス感染拡大によって、今まで当たり前だと思っていた社会の「仕組み」が今までのようには機能しなくなった状況から、多くのことを気づかされたという話だった。伊藤さんは「それでも社会は強制終了せずに続いていく。その過程で今まで『こうでないといけない』と思われていた世の中の常識にも、そうではない在り方が見えてきた」と仰った。このことは大学の講義のオンライン化にもいえて、オンライン上で講義やゼミを公開することによってさまざまな事物を共有できるようになり、学びの機会や選択肢をより広く持てるようになったと感じている。そして新型コロナウイルス感染拡大を経て、オンラインとオフラインの2つの選択肢を維持して教育の場を発展させていくことで、学びの過程やその後といった時間的な拡がりが建築文化全体を豊かにしてくれるのではないかと考えている。(高田涼平/西田研究室)


新建築データを面白がる合同ゼミ

このオンラインを活用したゼミの一環で「新建築データを面白がる合同ゼミ」を開催した。新建築データはラジオと同時期(2020年6月1日)に開始され、過去の『新建築』『新建築住宅特集』に掲載されている建築作品をさまざまな視点や言語からフォルダ機能によってアーカイブできるツールで、学生の研究内容に合わせたリサーチが可能だ。コロナ禍での大学は全面的に休校となり、学生は大学の図書館へ調べ物に行くということができない状況となった。そこで、このサービスを、意匠、構造、環境のさまざまな視点から使えないかと考え、東京理科大学の宮津裕次研究室(建築構造)と高瀬幸造研究室(建築環境工学)と、明治大学の川島範久研究室に声をかけ、合同ゼミを開催。個人やチームで、検索ワードによる輪読への活用、サービスそのものの展開の提案などを発表してもらった。fig.1

川島範久研究室(3:30〜)
リファレンス検索:土壁、アップサイクル

宮津裕次研究室(18:20〜)
リファレンス検索:CLT

高瀬幸造研究室(27:10〜)
リファレンス検索:自動制御ブラインド

西田司研究室
検索ツール活用法、サービス展開の提案:新建築データのススメ(41:25〜)
リファレンス検索、輪読の思考プロセス検討:ファサード(1:01:45〜) 
検索ツール活用法の提案:建築家心理(1:22:20〜)
ゲーム的視点から考えるサービス展開の提案(1:34:10〜)
リファレンス検索:ランドスケープ ・地図(1:58:02〜)

この発表を通して学生が「設計」としてとらえる領域が、建築そのものだけでなく、建築の情報を扱うウェブ上のサービスにまで広がっていることに情報化社会の面白さを感じた。

研究室で行なっている輪読ゼミに対して、新建築データの活用方法を模索するという指針をとった。結果、輪読のテーマに対して「新建築データをどのように位置付けるか」に個性が見られた。例えば、輪読のテーマを掘り下げるためのデータベースとして使ったり、輪読のテーマを受けたサービス自体への情報システムの提案が発表された。この発表を聞いて、新建築データを従来の雑誌形式の新建築の延長として捉えるのではなく、位置付け方から考えながらゼミに組み込むことで、大学教育・研究プログラムに新たな側面を付け加えることができそうだ。また、新建築データをゼミに組み込むことは、自ずとデジタルとアナログを横断するようなゼミ形式にも繋がり、オフラインを中心とする従来の教育・研究プログラムに対して、デジタルを用いたアプローチで新しい風を吹き込むことの可能性も垣間見れた。(長島淳/西田研究室)

あるグループが新建築データの情報システムを提案した。文化や慣習が多様化する社会において、最近では建築家がカフェの運営システムだったり、事業スキームを設計することも当たり前となりつつあり、建築が高域に捉えることが増えてきてる。このような社会の中で、そのグループは建築デザインをより広い次元で捉え、自身の経験に基づいた提案をした。今後はさまざまな分野をより横断的に考える必要に迫られる。すでに卒業設計や学生のアウトプットにもその兆候が見られるが、今は多様性をもった建築学としての転換期であると感じている。(小林雄輝/西田研究室)

西田司

1976年神奈川県生まれ/1999年横浜国立大学工学部建築学科建築学コース卒業/1999年SPEED STUDIO設立共同主宰/2002〜07年東京都立大学大学院助手/2004年オンデザイン設立/2005〜09年横浜国立大学大学院助手/2013年〜東京大学、東京工業大学、立教大学講師などを兼務/2019年〜東京理科大学准教授、明治大学特別招聘教授、大阪工業大学客員教授

教育
新建築データ

新建築データを面白がる合同ゼミ

fig. 1

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