雲南の西側に位置し、1997年に世界遺産に登録された麗江・古城。800年も前から雲南とチベットを結ぶ商業地として発達し、現在も観光客で夜遅くまで賑わっている。
水路に面して店舗や家々が建ち並び、商人や職人が生き生きと暮らしているfig.2。麗江一帯は、少数民族のナシ族(黒い人という意味)が多く住む町。東巴文字という象形文字をもっていた民族として知られている。麗江周辺では、中庭をもち、外壁を日干し煉瓦や焼き煉瓦で覆われた民家を数多く見ることができた。そんな麗江・古城から車で約40分ほどのところに「石積みと水路の村」はある。束河村と呼ばれるその村は、氷河を抱く玉龍雪山からの豊富な清水を巧みに束ねて、生活に生かしている農村だ。木造軸組の外側に石を積み上げた民家と、路地に沿って勢いよく流れる水路の心地よいこと!fig.3 路地という形態が大地に蓄熱されにくい手法であることを再認識させてくれたし、蓄冷された石と、冷水の勢いと共に吹いてくる風が、夏の終わりに清涼感をもたらしてくれた。
観光地化された古城あたりの華やかさと楽しさ、丘の上から眺める4,400戸もの甍の波は、観光客を魅了してやまないのだが、その華やかで繁栄する古城と、質実で貧しい農村の対比に、中国の近代化の歪みを見るようでもあるfig.4。それにしても、石積みの素朴な力強さと清水の走りは、古城とは別の感動を与えてくれる。石積みに時間の堆積を感じ、遠い山と生活が水路でつながっていることが実感できる。
■旅のデータ
国・省・市 中華人民共和国雲南省麗江市 麗江納西族自治県
人口 約110万人
面積 21.2km2
民族構成 ナシ族、漢族、ペ一族、イ族、リス族
交通手段 雲南省の昆明から飛行機で約40分
(初出:『新建築住宅特集』0509)