釜山は、はじめての街であった。空港からバスでホテルに向かう途中、小高い丘の斜面に張りつく家々やビルの密度がとても興味を惹いた。
どうなっているのだろう?……
あんな斜面でどう生活しているのか、見てみたいという欲求がどんどん強くなる風景であるfig.2。
凡一洞のホテルに行き、まずは市街地を散歩。観光マップにも出ているお決まりの辺りをうろうろしていたのだが、目の前に斜面にびっしり張りついた住宅街が眼に入ったとき、もういても立ってもいられない。
まるで「筋トレ」のような階段で一瞬たじろぐが、それより好奇心が勝るfig.3。驚くばかりの急な階段、路地歩きの楽しさと各住戸へのアプローチの仕方など、見慣れぬ強引な手法と施工に引き込まれるように上ヘ上へと登っていった。
老人が休み休み歩いている姿も見た。途中にポツンと、休憩できる椅子やソファが置いてある。決して暮らしやすいところではないと思う。彼らの日常の苦労も垣間見られた。面白がってばかりもいられないのだが、路地のもつ平面的なネットワークと、縦の移動が立体的な、豊かな空間を感じさせてくれた。
階段路地のある街は、スラムといえばスラムなのだが、こんなところで育った子供たちは決して貧しいとは思わない。この豊かな空間を空気のように身体で呼吸して、いつかどこかで爆発させてほしいと思う。観光地のちょっと裏に、こんな魅惑の空間があることが旅の醍醐味なのだ。
■旅のデータ
国・道・市 大韓民国・慶州南道釜山市
人口 約400万人(韓国第2の都市)
面積 758km2
交通手段 成田、大阪、名古屋、福岡から直行便があり、1〜2時間ほど。
(初出:『新建築住宅特集』0508)