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2022.08.12
Essay

釜山の階段路地──釜山/慶尚南道・韓国

旅のチカラ004

伊礼智(伊礼智設計室)

*本記事は『新建築住宅特集』2005年8月号に掲載されたものです。

釜山プサンは、はじめての街であった。空港からバスでホテルに向かう途中、小高い丘の斜面に張りつく家々やビルの密度がとても興味を惹いた。
どうなっているのだろう?……
あんな斜面でどう生活しているのか、見てみたいという欲求がどんどん強くなる風景であるfig.2
凡一洞ポムイルドンのホテルに行き、まずは市街地を散歩。観光マップにも出ているお決まりの辺りをうろうろしていたのだが、目の前に斜面にびっしり張りついた住宅街が眼に入ったとき、もういても立ってもいられない。
まるで「筋トレ」のような階段で一瞬たじろぐが、それより好奇心が勝るfig.3。驚くばかりの急な階段、路地歩きの楽しさと各住戸へのアプローチの仕方など、見慣れぬ強引な手法と施工に引き込まれるように上ヘ上へと登っていった。
老人が休み休み歩いている姿も見た。途中にポツンと、休憩できる椅子やソファが置いてある。決して暮らしやすいところではないと思う。彼らの日常の苦労も垣間見られた。面白がってばかりもいられないのだが、路地のもつ平面的なネットワークと、縦の移動が立体的な、豊かな空間を感じさせてくれた。
階段路地のある街は、スラムといえばスラムなのだが、こんなところで育った子供たちは決して貧しいとは思わない。この豊かな空間を空気のように身体で呼吸して、いつかどこかで爆発させてほしいと思う。観光地のちょっと裏に、こんな魅惑の空間があることが旅の醍醐味チカラなのだ。


■旅のデータ
国・道・市 大韓民国・慶州南道釜山市
人口 約400万人(韓国第2の都市)
面積 758km2
交通手段 成田、大阪、名古屋、福岡から直行便があり、1〜2時間ほど。

(初出:『新建築住宅特集』0508)

伊礼智

1959年沖縄県生まれ/1983年琉球大学理工学部建設工学学科卒業/1986年東京藝術大学美術学部建築科大学院修士課程修了/1986〜96年丸谷博男+エーアンドエー/1996年伊礼智設計室設立/現在、東京藝術大学美術学部建築科非常勤講師/2013年「i-works project」(『新建築住宅特集』1311)でグッドデザイン賞受賞/2014年「守谷の家」(『新建築住宅特集』1005)でグッドデザイン賞受賞/2014年「高岡の家」(『新建築住宅特集』1504)で第45回富山県建築賞優秀賞受賞/著書に『伊礼智の「小さな家」70のレシピ』(エクスナレッジ、2014年)、『住宅建築家 三人三様の流儀』(共著、エクスナレッジ、2016年)、『伊礼智の住宅デザイン DVDデジタル図面集』(エクスナレッジ、2017年)、『伊礼智の住宅設計法Ⅱ』(新建新聞社、2017年)、『オキナワの家』(復刊ドットコム、2018年)

伊礼智
新建築住宅特集
旅のチカラ

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新建築住宅特集 2005年8月号
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古い石積みに、新しい素材が上書きされている。/提供:伊礼智

凡一洞のメインストリートから10分ほど横道に入ると住宅街。スロープや階段の路地、それらから横に伸びていく細い路地のネットワークには生活臭が溢れる。/提供:伊礼智

凡一洞から南へ向かうチャガルチの階段路地。凡一洞に比べると傾斜がきつく、筋トレのレベルが高い。心してかかるべし!/提供:伊礼智

fig. 3

fig. 1 (拡大)

fig. 2