ピート・エッカートとヴィム・エッカートの兄弟によって2001年に設立されたスイスを拠点とする建築設計事務所E2Aは、近年、スイスやドイツで多くの大規模プロジェクトを手掛けている。都内4会場で分散開催する本展は、彼らの近年竣工したプロジェクトから進行中のプロジェクトまでを紹介する。
メイン会場のUSMモジュラーファニチャー ショールームfig.1では、立方体フレームを組み合わせてグリッドの展示台を構成し、「ディーコンリー・ベタニエン」 (2017年、『a+u』2102)fig.2、「TAZ誌新社屋」(2018年、『a+u』2102)fig.3などの7作品を、1/200の白模型、写真、図面によって紹介する。
各作品の模型は構造だけで表現されている。建具や装飾などの要素が削ぎ落とされていることで、形態によってもたらされるコンセプトが明快に伝わる。たとえば、「リートパークのガイストリッヒ集合住宅」(2020年、『a+u』2102)の模型fig.4fig.5は、凹型平面のヴォリュームの内側に中庭を設け、すべての居住部が最大限中庭に面するように住戸をずらしながら配置する構成を示している。周辺環境の影響を受けず、内部に都市的な暮らしを構築する設計者の意思が強く感じられる。模型と並べられた図面はいずれも実施設計図で、寸法や仕上げなど細部まで書き込まれており、抽象的な模型との対比が際立つfig.6。そこに、1枚の写真も併置される。
作品の出発点となるコンセプトを示す模型と、それ実現するための手段である図面、実際に現実に落とし込まれたシーンを示す写真と、建築の生成過程を異なるメディアによって切り出されることで、それぞれに欠けるイメージを補完し、作品を伝えようとしている。最小限の展示で建築のコンセプトを伝えることで、建築全体へのイメージを膨らませる。
抽象と具体を同時に重要視し、理想論に対しての現実の集積を照らし合わせ、両者の抱える矛盾を読み解いて建築を取り巻く文脈やプログラムの課題を再検証する、E2Aの「方法論」が表現された展示であった。
本展はUSMモジュラーファニチャー ショールームのほか、クリエーションバウマンジャパン 東京本社ショールーム、フライターグ ストア トウキョウ シブヤ、フライターグ ストア トウキョウ ギンザで同時開催中だ。