住宅特集 2015年6月号 東京の家
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【特集】小さな家──現代における小さいことの意味A’ House=ヴィール・アレッツ/東京の家=長尾亜子 今村水紀+篠原勲/R・トルソ・C=山下保博/特集論考1: 素材から仕事を生み出す──町おこしに繋がる素材の開発 山下保博/擁壁上=針谷將史/大泉の家=堀部安嗣/ペインターハウス=村山徹+加藤亜矢子/赤い別邸=村山徹+加藤亜矢子/特集論考2: 小さな建築の馴染める自立性 加藤亜矢子+村山徹/BIRD’S NEST ATAMI=中村拓志/汐だまり=安藤邦廣/さんたろう館=安藤邦廣/特集論考3: 小屋の自由と希望の風景 安藤邦廣/箱の家 151=難波和彦/徳島の住宅=納谷学+納谷新/Roof & Shelter 鎌倉=岸本和彦/土気の家=小泉誠/こだまの家=川口通正/阿佐ヶ谷の家=浅利幸男【連載】家をつくる図面 第5回 住まいの環境 星野山荘 設計=奥村昭雄 企画・監修=伏見唯+図面表現懇親会 インタビュー=奥村まこと 野沢正光 聞き手=大井隆弘
東京の家
撮影: 新建築社写真部

作品

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
A’ House 設計 ヴィール・アレッツ 所在地 東京都港区
小さな住宅の建て込んだ東京の中心地に建ち、その外形は斜線制限と駐車スペースによって決定される。大きなサイズの開口部を覆う透明ガラスの扉とレリーフ細工を施したガラスの扉2枚が設置され、その開閉によって街の状況を室内に取り込む。3階テラスの開口部を開放すると、緑地に対して視界が広がる。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
東京の家 設計 長尾亜子建築設計事務所 今村水紀+篠原勲/miCo. 所在地 東京都荒川区
マンションや雑居ビルなどの高層の建物と、古い木造家屋が並ぶ狭間に建つ。このふたつの異なる領域を繋げるヴォリュームが検討された。1階には音楽スタジオをもつ閉じた空間を設け、2、3階には敷地周辺の空所に向けて開放的な場がつくられている。このような閉じると開くという空間のつくり方と構造を対応させた、ハイブリッドな構成が目指された。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
R・トルソ・C 設計 山下保博×アトリエ・天工人 所在地 東京都渋谷区
都心の住宅地の角地に建つ。建築面積約30 m2 、高さ約10mの矩形のヴォリュームを立ち上げ、コーナー部を欠き取ったような佇まい。躯体は鹿児島の火砕流堆積物である「シラス」を原材料として新たに開発された「シラスコンクリート」打放しで、通常のコンクリートよりも白みがかり、細やかなテクスチャーで仕上がっている。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
擁壁上 設計 針谷將史建築設計事務所+ARIWRKS 所在地 神奈川県鎌倉市
雛壇造成された谷戸の住宅街に建つ。敷地はもともと1軒の屋敷が建っていた土地を3分割した1区画で、道路との高低差は最大約4m。基礎の一部をキャンチレバーにして擁壁と縁を切り、敷地北側の端ぎりぎりに建物のヴォリュームを配置している。ヴォリュームを敷地の北端に寄せたことで2軒の隣家との間に大きな中庭が生まれた。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
大泉の家 設計 堀部安嗣建築設計事務所 所在地 山梨県北杜市
遠くに南アルプスを望む、ゆるやかな南斜面に建つ方形屋根の架かる平屋。正方形平面の中央に広間を設け、その周辺に諸室を配している。天井高の高い広間にとって外側の小間や寝室が「彫りの深い窓」の役割を担う。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
ペインターハウス 設計 ムトカ建築事務所 所在地 神奈川県相模原市
3人家族のためのアトリエ併設住宅。約6.5×5.5mの平面の中央に階段室を置き、片側に壁を立てるプランを、1階と2階で左右を反転させている。外壁のサイディングは耐力壁を黄色、非耐力壁をグレーに張り分けたり、屋根はFRP防水をパラペットの外側まで包んだ帽子のようなかたちとするなど、周囲の街並みに馴染ませつつも自立した強さをもたせている。

撮影: 市川靖史
photo: Yasushi Ichikawa
赤い別邸 設計 ムトカ建築事務所 所在地 大阪府豊中市
かつて小さなお城のあった城下町に建つ。南北のファサードは耐力壁を二重にして大開口を実現。北側には幅約1.8mの居場所を兼ねた階段室を設置し、南側にも同幅の居室を設置して、中央に約4m角の立方体の広間を挟んでいる。外壁は赤く塗装し、周囲に溢れる緑の補色として、また古い街並みに馴染むことが意図されている。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
BIRD’S NEST ATAMI 設計 中村拓志&NAP建築設計事務所 所在地 静岡県熱海市
ホテルのアスレチックゾーンに建つティーハウスで、ツリーハウスビルダーとの協働でつくられた。枝を組み合わせて機能的かつ快適な環境をつくるカラスの巣のような建築が目指されている。直径30mmの六角棒と28mm角の四角棒の面を組み合わせたトラス構造をつくり、その上にツリーハウスが載る。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
汐だまり 設計 里山建築研究所 所在地 宮城県本吉郡南三陸町
東日本大震災で被災した志津川湾に面した高台に、板倉構法で建てられた小屋。地域の木材と職人による家づくりを目指す「南三陸木の家づくり互助会」によって建設された。周辺の復興が進められる中、地域の住人たちの寄り合いの拠点として使われている。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
さんたろう館 設計 里山建築研究所 所在地 宮城県本吉郡南三陸町
復興が進む被災地に、板倉構法による核家族を想定した標準仕様住宅のモデルハウスと、寄り合い所を兼ねて建てられた2階建ての小屋。給湯のために外部に薪ボイラーが設置されている。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
箱の家 151 設計 難波和彦+界工作舎 所在地 東京都渋谷区
都心の商業と住宅が混在するエリアに建つ「箱の家」シリーズ最小の住宅。1階に店舗、2階に住居、地下1階に多目的室を配置。敷地が細分化されていく都心の最小規模の敷地にできた最大限の空間とテナントを付随させるという資金計画を両立することで成立し、都市の原理を体現した、都心ならではの「箱の家」である。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
徳島の住宅 設計 納谷学+納谷新/納谷建築設計事務所 所在地 徳島県徳島市
東と西とで2面接道する敷地に建つ軽量鉄骨造の店舗併用住宅。西側には商店街と繋がる幅員15mの道路に面して美容サロンを設けている。2階、3階が住居で、お客様用駐車スペースの上に3階子供室のヴォリュームが張り出す。住居には東側からアクセスする。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
Roof & Shelter 鎌倉 設計 岸本和彦/acaa 所在地 神奈川県鎌倉市
北鎌倉の山の上にある緑道に面して建つ。周囲の緑とその先に見える山並みの景色を取り込むべく、西面には高さ約1.5mの開口部を幅約10mに渡って連続させ軒高を抑える一方で、人通りの多さにも配慮して、フロアレベルをGLから約1.2mほど上げている。東面は2階レベルに大開口を開けて、空へと視線を導く。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
土気の家 設計 小泉誠 所在地 千葉県千葉市
60坪の土地に対して12坪の建築面積で建てられ、小さな規模の住宅に対して大きな庭を生み出されている。「食べる」「寛ぐ」「寝る」という生活の行いを、建具で仕切られた部屋としてではなく、段差で分け、それぞれの場の設えによって小さな空間を活用している。庭には大きなデッキと丘を設けて、家の周囲にも生活の場を生み出している。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
こだまの家 設計 川口通正建築研究所 所在地 東京都
新旧さまざまな建物が建て込む、東京の密集地に建つ。北側で接道し残る3面を隣家に囲まれる中、南側隣地の隙間から射し込む光を室内外最大限に活用すべく、東庭に2階居間をくの字に張り出し、テラスと1階廻廊脇の植栽のすべてに光が届くよう複雑なファサードとなっている。

撮影: 新建築社写真部
photo: SHINKENCHIKU-SHA
阿佐ヶ谷の家 設計 浅利幸男/ラブアーキテクチャー 所在地 東京都杉並区
敷地は住宅街の幅員1.4mの路地に面する。2項道路によるセットバックに加え、玄関前に奥行2m弱の北庭を設けることで密集住宅地の中に隙間の空間をつくり出す。内部は吹抜けをつくることのできない条件の中で、吹抜けに代わる知覚的広がりをもてるよう計画されている。