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都市とテクノロジー 第6回:まちづくりとCivic Tech ---東京都のオープン戦略

吉村有司/東京大学先端科学技術研究センター特任准教授

2020年3月3日、東京都が新型コロナウイルスに関する正しい情報を都民に提供することを目的として、新型コロナウイルス感染症対策サイトを開設した。

このサイトの構築を請け負ったのが、ICTを活用しながら市民主体で地域の問題解決を目指す非営利団体、Code for Japanである。この感染症対策サイトは、開設当初からシビックテック・コミュニティー界隈では相当な話題になっていた。というのも、自治体の公式サイトとしては異例づくしだったからだ。

まず第1に、サイト構築から開設までわずか1週間というスピード感があげられる。自治体との仕事は通常なら仕様書をつくって見積もりをとってと、数カ月はかかるところをアジャイル開発とオープンソースでサイトを構築してみせた。第2に、ソースコードをGitHub上に公開し一般の人々がサイト構築に携われるようにした点。そして最大のポイントは、都が公開したソースコードを用いて全国の自治体が次々と派生サイトを作成したことである。

これまでならオープンソースでサイトを構築する考え方は一般的ではなかった。しかし新型コロナウイルスの問題は東京都だけの話ではない。どこかの自治体がつくったコードをシェアして使えるようにすることによって、ほかの自治体が同じものを一からつくり直す時間とお金が節約される。それは回り回って我々国民ひとりひとりの利益に繋がる。また、グラフや表などを効果的に用いた分かりやすいデザインがサイトの普及に貢献した点も見逃せない。従来のエクセルなどを用いたテキストやPDFデータではなく、陽性患者数や検査実施人数など、誰でも一目で分かるようにデザインされている。

ここで示されたこと、それはほかの自治体と協力し合いながら「みんなの知恵」を集めるとよりよいシステムを日本全体で開発できるということだ。しかしよく考えてみれば、これは「まちづくり」そのものではないか。元来まちとは誰もが編集可能なものであったはずだ。たくさんの人たちが集まって住むがゆえに噴出する問題を、みんなの知恵を集めることで解決していく。これがまちづくりの起源であり都市計画の原点だ。

今回のコロナ禍における東京都のオープン戦略とCode for Japanの活動は、まちはみんなのものであり、みんなでつくっていくものだという可能性に、今あらためて気づかせてくれる。

関連情報:
2019年に東京大学で行われた第2回目のUrban Sciences Lab連続レクチャーでは、Code for Japanから関治之氏を迎えて行われた。

吉村有司/東京大学先端科学技術研究センター特任准教授
愛知県生まれ、建築家。2001年より渡西。ポンペウ・ファブラ大学情報通信工学部博士課程修了。バルセロナ都市生態学庁、カタルーニャ先進交通センター、マサチューセッツ工科大学研究員などを経て2019年より現職、ルーヴル美術館アドバイザーを兼任。主なプロジェクトに、バルセロナ市グラシア地区歩行者計画、Bluetoothセンサーを用いたルーヴル美術館来館者調査、機械の眼から見た建築デザインの分類手法の提案など、ビックデータやAIを用いた建築・まちづくりの分野に従事。「地中海ブログ」で、ヨーロッパの社会や文化について発信している。