新建築 2020年7月号発売となりました !

都市とテクノロジー 第3回:CityScope まちづくりの評価システム

吉村有司/東京大学先端科学技術研究センター特任准教授

CityScopeは、都市をみんなでつくっていく効率的なツールに留まるだけではない。まちづくりのコンペ案がつくられ、それを住民とともに練り上げていく際に、客観的枠組みも提供する。まちづくりのコンペにおいては、個々の建築家やプランナーから出てきた案を客観的に評価するフレームはほとんどない。各案は各々の立ち位置によって主観的にプレゼンされるので、それを見ている非専門職である住民の多くは困惑することが多い。結果、内容を十分に理解する前に見栄えのよい案が採用されてしまう。

FindingPlaces
ドイツ、ハンブルグで行われたコミュニティ・アーバンプランニングのセッションで使われたツール(FindingPlaces)と、実際にそれらのツールが使って一般のかたがたが議論している様子。MIT City Science Groupの一員として、酒井康史氏がプロジェクトに参加している。

CityScopeは、各案の立ち位置によらない、そのまち独自の共通の指標をつくりだすことを目指している。各々の案で用いられた数値を入力すると、すぐに周辺環境に及ぼす影響などが可視化される。客観的な数値化や視覚化はステークホルダーとのコミュニケーションをも円滑にし、集団的意思決定の透明性も増す。最終的には、まちづくりにおける合議を強力に後押しするツールとなり得る可能性を示している。話し合いによる合意形成がとかく苦手な日本のまちづくりにこそ最も求められている視点だろう。

吉村有司/東京大学先端科学技術研究センター特任准教授
愛知県生まれ、建築家。2001年より渡西。ポンペウ・ファブラ大学情報通信工学部博士課程修了。バルセロナ都市生態学庁、カタルーニャ先進交通センター、マサチューセッツ工科大学研究員などを経て2019年より現職、ルーヴル美術館アドバイザーを兼任。主なプロジェクトに、バルセロナ市グラシア地区歩行者計画、Bluetoothセンサーを用いたルーヴル美術館来館者調査、機械の眼から見た建築デザインの分類手法の提案など、ビックデータやAIを用いた建築・まちづくりの分野に従事。「地中海ブログ」で、ヨーロッパの社会や文化について発信している。