新建築 2020年11月号発売となりました !

海外の建築教育 第11回:行雲流水 @イギリス(3/5)

AAスクールのマスターカリキュラム[前編]

堀田憲祐/ぽ

ロンドン・ベッドフォードスクエアに位置するAAスクール:Architectural Association School of Architecture

かつて、「テレビを見ない」といえばクールな時代があった。今となっては、テレビを見ないことが当たり前の世代が現れつつある。「テレビ」という単語は、変数としておいてくれればよい。たとえば、UNIQLOは絶対に着ない、タピオカを飲まない、などである。あくまで個人的意見だが、近年のAAスクールとは、そういう場所だ。半分は本物のはぐれ者だが、半分はまっすぐに敬意をもって入学する者。優等生タイプの学生は、AAスクールがもつ本来のパンクさを誤認しているのではないかと感じた。中心を希求する欲望と、しかし周縁でいたいという意思が葛藤し、『荒野のおおかみ』のように、前にも後ろにも進めない状態でせめぎ合っている集団に見受けられた。いや、そんなことは本人達にとってはどうでもいいことだったかもしれない。

AAスクールはRobert KerrとCharles Grayが1847年に設立、1917年に現在も校舎を構えるベッドフォードスクエアに移動してきたらしい。記述によると、モダニズムの時代にはモダニズムを否定し、ポストモダンの時代にはポストモダンを拒否していたようで親近感がわくが、いつの時代も様式の批判という意味ではかなり安定している。私の代の校長は拡大路線で一気に人が増えて、建物を買いこんで大幅に改築していた。この頃は何に傾倒していたのだろうか?

100年ほど時を進めて、筆者は最初の年には「Emergent Technology and Design(以下、Emtech)」に籍を置いた。このマスターユニットは2000年にMichael WeinstockとMichael Henselによって創設され、後にAchim Mengesが加わった。アジェンダは生物学のロジックと近年のテクノロジーをもって建築や都市をつくるロジックを再定義しようというものである。制作された構築物や論文を見れば一目瞭然だが、言葉で説明するのは難しい。背景としては、Thompson、Turing、Whitehead、Darwin、HaeckelやFrei Otto(ILEK)に何らかの影響を受けていることは、先述の『Morpho-Ecologies』にも明記されている。

AA Graduate School introductions: Emergent Technologies and Design 2014-15:AA School of Architectureより転載

もっと具体的に書いてしまうと、①彼らが物理模型で検証したフォームファインディングを、コンピュータで実装する。あるいは、②彼らが概念を示したが、計算量的にコンピュータを使わなければできなかったことを、実装する。③通常の素材、複合素材、スマートマテリアルなどに関してもコンピューティングを利用し、ふるまいを予測する。そして、④その緻密な情報を建設などの段階で落とさないように、近年のパーソナルファブリケーション技術を最大限利用して製造/生産するというのが、基本的なスタンスかと思う。次回は、なかでも特徴的であった四つのセッションを紹介する。

堀田憲祐/コンピュテーショナル・アーキテクト
日本生まれ、京都大学、東京大学、ロンドン大学、AAスクール修了、博士。日本においては日建設計・三菱地所設計などのプラクティスでコンピューテション業務を、2016年にコンピュテーショナルデザイン会社ぽを起業。また、アカデミアでは大学や研究所などでリサーチ活動も並行している。お気に入りのおやつはあんころ餅。
筆者ウェブサイト:http://p-o.co.jp