住宅特集 2020年12月号発売となりました !

海外の建築教育 第2回:コーネル大学 ---スタジオ文化

カズ・ヨネダ/Bureau 0-1

コーネル大学は一見すればおとぎ話にでてくるような環境だ。ハリーポッターの舞台、ホグワーツ魔法魔術学校のように大自然に囲われ、動植物が豊かな楽園だ。逆説的にいうと人間にとっては過酷な環境なのかもしれない。11月からひとたび雪が降り始めると、4、5月までは閉ざされた修道院のように外にはでられない。制作や勉学に集中できる環境ともいえ、筆者が在籍していたのはOMAが設計した新しいスタジオ施設が竣工(2011年)する前の時代だった。当時のスタジオは産業革命時代に建てられた煉瓦造りの元靴工場だった。この寒いこと寒いこと。


OMAが設計した新しいスタジオ施設

最初の2年間は、ほぼ学生寮に帰ることもなくスタジオで寝袋のなか丸まって夜を過ごした。この2年間を生き延びて、「クリームのように浮く」ことが認められた場合、やっとオプションズ・スタジオへと進める。オプションズ・スタジオでは、一学期ごとに更新され多種多様な講師陣によってオファーされる個性豊かな設計課題をこなす。筆者がいたときは、ヴァレリオ・オルジアティ(Valerio Olgiati)やトム・メイン(Thom Mayne)などが設計スタジオの教鞭をとった。この類の客人招聘教授に関しては次回以降で言及しよう。このように、基礎を形成する2年を終えた後にやっと多様な建築的思考や方法論に触れることができる。このオプションズ・スタジオの形態は、欧米でほとんどの大学や院でも継承されるエコール・デ・ボザール教育方式の名残である。学部の5年間で最後の年は、卒業論文および制作にとりかかる。自分で設計出題を設定するにあたり既往研究を半年でまとめ、残りの半年で制作と論文を完成させなければいけない。最後に、製本までして提出しないと卒業はおろか、卒業証書も授与されない。卒業式を越えて提出した場合、その日が正式な学部課程終了日として卒業証書に記される。最後まで気の抜けないプログラムである。


元靴工場のスタジオは改修され現在図書館として利用されている

カズ・ヨネダ/Bureau 0-1 主宰
ワシントン州生まれ、カリフォルニア州育ち、建築家。
コーネル大学建築学科B.Arch卒業、ハーバードGSD大学院修士M.Arch2課程修了。
伊東豊雄ハーバード@東京スタジオの立ち上げに参画するため2011年に渡来。Takramのアソシエイトディレクターを経て、2014年にbureau0-1を開始。2018年には、法人化を経てBureau 0–1株式会社。 プラクティスのかたわら、教育や研究にも積極的に取り組む。現在、慶應義塾大学、日本女子大学、法政大学、早稲田大学、ハーバード大学GSDで講師を勤め、国内外に活動の場を広げている。主なプロジェクトに、大和ハウス工業Intelligent Logistics Center PROTO、Takram表参道スタジオ、dOCUMENTA(13)で展示したShenuなど。