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海外の都市 第3回:台湾の都市と建築探訪 ---台南の生活景観

許國威/台湾・朝陽科技大學

台南の生活景観

台南の都市発展は、大航海時代の17世紀オランダ統治時代に遡ることができる。台湾がその当時、東アジア貿易圏に加入しはじめた。台南は台湾の文化首府として位置付けられていた。これまで都市の歴史や文化を物語るものとして保存されてきたオランダ、明鄭、清朝、日本など、各統治時期の歴史街区や建築が、生活空間の記憶と痕跡になり、台南都市発展においての資産となっている。

台南に位置している筆者の母校である成功大學に、古くからの友人に会いに行ったとき、大学時代を思い返したり、路地に隠れているグルメに心惹かれる。歴史的なまち並みを散策していると、あまり感じさせない30年間の時の流れが、まちなかの美しいの魅力と趣を醸し出している。台南市政府は都市デザイン戦略で歴史的文脈を尊重し、公共のオープンスペースと歴史建築の再利用を都市の触媒(Urban Catalystsアーバンカタリスト)として位置付けている。地元の文化事業者が古い建築空間に新風を吹かせて、行政とともに台南の特有な生活風景をつくだす。

孔子廟周辺
台南の旧市街の核心である孔子廟周辺に、明鄭政権時代や清朝統治時代の寺廟と路地空間、日本統治時代の旧台南州庁(現台湾文学館)、旧台南警察署(現台南市美術館1館)、旧台南地方法院(現司法博物館)などの公共建造物群が保存されている。また、台南神社跡地で駐車場予定地となっていた場所を、台南市美術館2館に改造し、日本建築家坂茂の設計で、台南の暑い気候を考慮し、日差しを遮るように葉かげをモチーフにしたフラクタル構造のガラス屋根が構成されている。積み重ねられた複数の“ボックス”が緑と光が楽しめる半屋外のオープンスペースを形成し、周辺の生活街区と連結している。

五條港
神農街は台南でもっともよく保存している歴史的街区と知られ、清朝時代の台南旧市街地と運河を結んだ五條港地区の栄枯盛衰、および都市再生の変容を記録している。かつての重要な商業エリアであった海安路の拡張と地下街計画は、現地の都市文脈を壊してしまい、衰退をもたらしたが、市民の歴史的街区に対する参加意識が芽生えるきっかけとなり、まち再生の転換点になった。

「府城軸帶景觀改造計画」
「府城軸帶景觀改造計画」はオランダのMVRDV建築チームが手かける緑と水を都市と結びつけたプロジェクトである。“台湾の森”をコンセプトにした緑地帯が、新道路の整備で分割された古い路地を一体化することに期待される。かつて水路沿いの漁獲集散地であった廃墟が屋外水遊び広場の「河樂廣場」(台南スプリング)に改修された。ラグーン循環式システムを備えた大型親水空間は、台南の都市中心部と運河水路の歴史的な空間との融合を実現している。

-執筆-
許國威/台湾・朝陽科技大學 (設計学院)景観・都市デザイン学科教授
1966年台湾台北生まれ。1996年テキサスA&M大学都市および地域科学の博士号を取得。台湾住宅都市開発局公務員を経て、台湾の彰化県で環境景観の総合コンサルタントとして務めた。研究分野は都市再生、生態都市計画・設計、産業文化資産再発展、文化資産空間再利用運営管理など。

-翻訳-
林君嶸/奈良女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程社会生活環境学専攻
1991 年台湾台中生まれ。台湾東海大學文学部日本語言文化学科卒業。2017 年奈良女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程住環境学専攻修士修了。