住宅特集 2020年12月号発売となりました !

新建築ライブラリー 第4回:『建築昭和史』その4

当社の96年におよぶアーカイブから、絶版本を中心に紹介する「新建築ライブラリー」。『建築昭和史』(1977年、著:佐々木宏)の第1章「大正14年から昭和5年までの状況」の3/4をご紹介します。

建築専門誌として認知されたはじめた『新建築』は、創刊当初に想定していた読者層の素人向けの記事から、より建築の専門的な記事が多くなっていきました。一方で、外国の新しい建築をはじめ、日本の古建築や地震レポート、さらには家相など、誌面で取り扱うテーマは、建築意匠だけでなく、史学や現代でいう環境学まで多面的に捉えようという意図がうかがえます。またこの頃から、建築メディアが確立されていない黎明期の試行錯誤を続け、徐々に形式化されていく過程についても言及されています。

以下、本文より抜粋

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これらの特集によって読者の知的好奇心も大きく刺激され、その反響も高まり、漸く「新建築」は建築専門誌とみなされるようになってきた。それにつれて発行部数も増加したようであるである。一方で創刊号以来の性格が次第に変って行く。素人向けの啓蒙記事は減少し、建築専門の記事が多くなり。今日の建築雑誌の性格に近いものになってくる。しかし一方では、建築を総合的なものとして包括しようという初心の視点は失われて行ったといえよう。改めて、創刊号およびそれに続く号の目次を見ると、外国の新建築の紹介、外国の古典建築、 日本の新しい住宅、日本の古建築、建築構造、建築材料、地震のレボート、家相、住宅の諸設備、庭園、設計相談、その他、誌面は各種のテーマについて非常に多岐にわたっている。これを多様とみるが雑多と受け取るかによって評価は分れるであろう。 しかしこうした編集方針には、建築をデザインだけではなく。各種の問題から多面的に捉えようという意図があったことが推測できる。ただ事項は多彩であったが、記事としての表現は雑多に近いものであった。新しい雑誌の誕生という知的ディレンタンティズムに対して、若い執筆者たちは青臭いペダンティズムで向ったように思われる。

こうした混乱に次第にある種の方向づけか行なわれるには何年かを要した。専従者のように編集に深く関係した岡田は「建築家の作品集」という形式によって、ある面での建築の総合的な性格を誌面に反映させようとした。また、日本ではまだ建築デザインが過渡期であった時期に生まれた雑誌であるので、海外の建築家や建築を紹介することによって、誌面の性格ばかりではなく、日本の建築デザインのオリエンテーションをも定めようという野心も盛り込んだのであった。それが吉岡に支持され、読者の反響も大きくなってきた。学生の間にも購読者が多くなり学生の展覧会なども紹介されるようになった。

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著者略歴(*本データは書籍の刊行当時に掲載された情報です)
佐々木宏
昭和6年北海道に生まれる。昭和30年北海道大学工学部建築学科卒業。昭和32年東大大学院修士、昭和37年同博士課程終了。現在、佐々木宏建築研究室主宰、および法政大学工学部講師。