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コロナ時世下の都市空間 第3回:自粛解除と共に整備されるポップアップ自転車レーン

関谷進吾/プレイス・ソリューションズ・グループ代表

公共交通の代替手段としての自転車インフラ

WHO (世界保健機関) によるコロナ対策指針 (2020年4月21日時点) では、移動手段として、自転車と歩行移動は、過密が避けられるだけでなく、テレワークによって懸念される運動不足の解消にもなるとして推奨しています。NACTO (全米都市交通担当官協議会) が公開した感染症対策復旧のための街路では、医療機関などのエッセンシャルワーカー (生活必須職従事者) のアクセスや、 公園その他の公共空間を繋ぐ経路で、ポップアップ自転車レーンの整備指針 (2020年5月21日時点) を打ち出しています。ニューヨーク市交通局は、ブルックリンとマンハッタンを繋ぐすべての橋で、2020年3月の自転車利用が、昨年度と比べて1.5倍以上であったことも踏まえて、新たな16kmの自転車レーン整備を決定しています。こうした自転車需要を踏まえたインフラ整備が各地で加速しています。

狭幅員で安価な自転車・マイクロモビリティの道路配分
パリ市は、8週間もの都市封鎖を経て、段階的な外出自粛解除を5月11日より進めていますが、対人距離を確保するために、自転車レーンを650kmの整備する計画を発表しました。これには、「コロナ自転車レーン」と呼ばれる仮設仕様のポップアップレーンも含まれています。イダルゴ・パリ市長は、コロナ以前に、2024年までに自転車に優しい街に更新し、市内すべての15分圏域内で、生活必需品およびサービスを享受できる「自転車計画:プランヴェロ」を発表していましたが、コロナ禍を受けて、この長期計画を前倒しすることを決断しました。ロンドン交通局は、コロナ禍後に人々が回帰すると、自転車走行距離が10倍、歩行距離は5倍になり得ると予測しています。同市が発表した計画「ストリートスペースフォーロンドン」(2020,5,6)によって今夏までに、既存の160kmの自転車網に30kmの常設自転車レーンを追加整備する予定です。

ミラノ市も先立って市内の35kmの道路の車道を自転車レーンに転用するオープンストリーツ計画を発表しています(2020年4月21日時点)。このように各地で安価で個人が自由に動き回れて、対人距離を図れて、健康的な移動手段でもある自転車やマイクロモビリティのための街路整備に注目が集まっています。日本でも、4月のドコモのシェアサイクルの会員登録者数が前月比較で2割増していることや、まちなかで子供を乗せた電動アシスト自転車を良く見かけるようなことも踏まえて、注目が集まっています。重要なことは、ハイテクな技術ではなく、ローテクな手段である看板、塗料、コーンで、実現できる取り組みだということです。ミラノ市交通局の公共空間事業に当初から関わっているデメトリオ・スコペリッティ氏によると、コミュニティに耳を傾けて場所を選定することと、「小さなステップの積み重ね」が大事とのことです。

関谷進吾/プレイス・ソリューションズ・グループ代表

1983年、英国ウェールズ生まれ。慶大環境情報学科卒、同大学大学院修了。フルブライト奨学制度で、ニューヨーク市のプラット・インスティテュート大学院にてプレイスメイキング学修士。ニューヨーク市では、BID組織ユニオンスクエアパートナーシップのデザインスペシャリストとして働き、後に、WXY建築・都市デザイン事務所において、プランナーとして、ダウンタウンブルックリンの公共領域の再編プロジェクトなどに従事。帰国後、プレイス・ソリューションズ・グループ合同会社を設立。